日本基督教団 高井戸教会

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高井戸教会だより 37号

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「洗足のキリスト」
– ヨハネによる福音書13章1 – 20節-

牧師 七條 真明

主イエス・キリストは十字架におかかりになるその前に、弟子たちと食事をなさいました。いわゆる「最後の晩餐」と呼ばれる食事です。その食事の席で起こった出来事として、新約聖書の四つの福音書のうちヨハネ福音書だけが伝えているものがあります。それは、ヨハネ福音書第13章に記される、主イエスが12人の弟子たちの足を洗われたという「洗足」の出来事です。

 弟子たちとの食事の席で、主イエスは立ち上がられ、上着を脱ぎ、手ぬぐいを取って腰にまとわれます。そして、たらいに水をくみ、弟子たちの足を洗い、その足を腰にまとった手ぬぐいでふき始められました。順々に弟子たちの足を洗われる主イエスに対し、ペトロは自分の番がくると、一つの問いを投げかけます。「主よ、あなたがわたしの足を洗ってくださるのですか」。

 足は体の中で最も汚れる部分です。一日の終わりに弟子たちの足はみなひどく汚れていたでしょう。しかしペトロが主イエスに問わずにおれなかったのは、単に自分たちの足が汚れていたからというばかりでなく、当時、他の人の足を洗うことは奴隷の身分にある者の仕事だったからです。弟子たちを従わせ、人々の前で権威ある言葉を語り、力ある業を行われた主イエスです。その御方が、奴隷の身分にある者のように、弟子たちの足を手にとり、ご自身の顔の前において、丁寧に洗われる御姿がここにはあるのです。ペトロがさらに「わたしの足など、決して洗わないでください」と語り、自分の足を主イエスが洗おうとなさるのを、主イエスにふさわしくないこと、主イエスと弟子である自分との関わりにおいてあってはならないこととして拒もうとしたのは、ペトロにとって当然のことでありました。けれども、主イエスは、ペトロに対してきっぱりと言われます。「もしわたしがあなたを洗わないなら、あなたはわたしと何のかかわりもないことになる」。

 主イエスはペトロに言われるのです。わたしはあなたのことを洗う、そのことによってあなたとわたしの間に分かちがたい関わりが生まれるのだ、と。この主イエスの御言葉は、洗足の出来事が、先取りするように指し示していることを私たちに気付かせてくれます。そして、それはペトロの問いに対して答えられた主イエスご自身の御言葉の中に明らかにされています。「わたしのしていることは、今あなたには分かるまいが、後で、分かるようになる」。

 弟子たちが、後でわかったこと。それは、主イエスが足を洗ってくださった弟子たちの、そしてすべての人間の罪を洗うために、十字架における贖いの死を引き受けてくださった、ということでした。主イエスは、ご自身を裏切ることになるイスカリオテのユダをはじめ、他の弟子たちもまたご自分を見捨てることをご存じで弟子たちの足をみな洗ってくださいました。主イエスの愛が、どれほど私たちの思いを越えて大きいことかを思わずにはおれません。その計り

知れない主イエスの愛を第13章1節の 美しい御言葉が私たちに伝えてくれます。 「イエスは、この世から父のもとへ移る御自分の時が来たことを悟り、世にいる弟子たちを愛して、この上なく愛し抜かれた」。

 弟子たちの足を洗われる主イエスの御姿の中に現れているのは、私たち人間の最も汚れた部分にも手を伸ばして、責任をもって愛し抜こうとなさる神の愛です。私たちに注がれるその確かな愛に生かされて共に歩んでまいりたいと願います。