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高井戸教会だより 8号
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説教 クリスマスに想う「アウグストかキリストか」
ルカによる福音書2章1~7節
牧師 内藤 留幸
ルカ福音書によると、主イエス・キリストが誕生された当時、世界で最強の実力者はローマ皇帝アウグストであった。その名はガイウス・オクタビアヌス。彼は有名な皇帝ユリウス(英語読みにするとジュリアス・シーザー)の甥として紀元前44年に生まれ、後にユリウスの養子として迎えられ、内政、外交に成功を修め、ローマ皇帝となった。その見識は高く、才能は優秀で、ローマ史の中では群をぬいて優れた皇帝であった。それ故ローマ元老院は「アウグストは神の子、救主」と呼んだ。また彼が赦免を告知することを人々は福音といったといわれている。ローマ皇帝アウグストは巨大な軍隊を持ち、莫大な富を貯え、あらゆる権力を一手にして、当時の世界に支配者として、君臨していたのである。
そのようなアウグストの支配する世界の中にあって、東方の一植民地ユダヤ地方の寒村でひとりの幼な子が貧しい家の子ども
として生まれた。それが実は、救主イエス・キリストの誕生であったとルカ福音書は記している。ここでルカは語っている 巨大な権力
をもって世界を支配し、君臨しているローマ皇帝アウグストと、誰からも顧みられない貧しい姿でお生れになられた主イエス・キリストとを対比させて、どちらが本当の救主なのか、暗い世に住み、しばしば悲しみに泣き重荷に喘いでいる私たちにとって、どちらが真のメシヤなのかと問いつつ主イエス・キリストの誕生の次第を記している
のである。
皇帝アウグストはその才能の優秀さと政治権力の絶大さの故に「生ける神」とか「救主」といわれ、彼がいる限りローマは平和であ
り、ローマは永遠であるといわれていた。ところが歴史は教える。ローマは皇帝の座をめぐって陰謀渦巻く凄まじい権力争いが
繰りひろげられ、それに内政・外交の失敗が重なって、さしものローマ帝国も蛮族に滅ぼされてしまった。今ではローマの栄華や繁栄は古代の一つの語り草となっているだけである。
それに対して主イエス・キリストは貧しい家の子として生まれ、飼葉桶の中に寝かされたというのが、その人生のスタートであった。名もない両親に育てられ、公生涯に入られてからは神の愛を語り、神の愛に生きられた。しいたげられた人を助け、友なき者の友となられて心を砕かれた。そして遂に、人生の終わりに十字架につけられて殺された。(主イエスの側から言えばご自分の生命を人々の救いのために与えられたのである。)その主は死の力に勝利して復活された。そして人々に現われて「私は生きている。私は世の終りまで信じる者と共にいる」といわれた。そのみ言を聞いて弟子たちは雄々しく立ち上がった。時が経つにつれて主を信じる人々は数を増し、ついに世界中に信仰者の群である教会が生まれていった。
私たちは今問われている。世の高い位をめざして小さなアウグストになろうとしているのか、キリストに自分の生涯をささげて神
の栄光をあらわそうとしているのか。一人びとりが決断をしよう。