日本基督教団 高井戸教会

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高井戸教会だより 20号

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”系図が語るメッセージ”
マタイによる福音書1章1~17節

牧師 内藤 留幸

ユダヤ人を対象にして書かれたマタイ福音書はクリスマスの出来事を記すに際してユダヤ人が大事にしてきた系図から始めている。救い主としてこの世に来て下さった神のみ子イエス・キリストが信仰の父アブラハムの子孫であり、民族の誇りであった建国の父ダビデの子孫であるということは、ユダヤ人にとっては驚きであり、感銘深いことであったに違いない。

今回はこの系図が語り示す多くのことの中から二点に絞って語ってみたい。

(1)この系図が慎重に配列され、14代ずつ3グループに分かれていることは注目に価する。これは神の民イスラエルの歴史の三段階を表わしているのである。

 第一段階はアブラハムからダビデまでの歴史で、いわば神の民の発展の歴史であった。ダビデによるイスラエル王国の建国は神の祝福をうけたその頂点であった。しかし、ダビデの罪(バト・シェバ事件)をきっかけにしてイスラエルは衰退期に入った。

 第二段階はダビデからバビロン捕囚に至るまでの歴史である。バビロン王ネブカドネツァザルによってエルサレムの町は陥落し、イスラエル王国は滅亡してしまった。神の民は苦難のどん底に沈み、暗い時代が始まるのである。

 第三段階はバビロン捕囚後からイエス・キリストまでの歴史である。イエス・キリストは苦難のどん底にあった神の民を罪の束縛から解放し、滅亡から救い出し、悲劇を勝利に変えて下さるお方である。

 神の深い救いのご計画が主イエス・キリストによって、いよいよ決定的に始められることを、この系図は告げている。これこそ、まさに、神の雄大な救いの計画に他ならないのである。

(2)この系図の中に女性の名が何人も含まれていることが語る素晴らしいメッセージに注目したい。

 聖書の時代のユダヤは男性優位の家父長制社会であった。それ故、系図は当然代々の男性の名が記されているのが普通であった。けれども、この系図には何人もの女性の名が載っていた。これはユダヤ人には驚くべきことであり、予想外のことであった。しかも、その女性たちが「女性の鑑」ともいうべき人たちではなく、一般の人たちから卑しめられていた異邦人であったり、遊女であったり、深い罪を犯した人たちであった(タマル、ルツ、ラハブ、ウリヤの妻バト・シェバ)。

けれども、マタイはこの系図にそうした女性の名を隠さずに記し、その最後に人間の罪の歴史を担い、罪の泥沼からすべての人間を救われる方としてイエス・キリストの名を記しているのである。このことを現代的に表現すれば、神は救い主イエス・キリストによってすべての差別を取り除かれたのである。ユダヤ人と異邦人の差別を取り除かれ、男性と女性の差別や義人と罪人の差別すらも取り除かれた。神は男性も女性も等しく愛され、ユダヤ人も異邦人も、罪を犯した人も義人も同じように神の雄大な救いのご計画の中に取り入れられ、その尊い御用に用いて下さったのである。